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週5で止めた総武線



「ふうむ、テツに言われて調査にきたが、モンスターもいないし、もうそろそろ帰るとするか」

かれこれダンジョンに入ってから1日が経過しようとしてるが、まだ何にも見つからず、何にも遭遇していない。平和。うむ平和すぎて退屈すぎるぞ。この探索は。モンスターの1匹でもでてこんか。

「このダンジョンは外れっぽいな」

「未開のダンジョンだからモンスターもいっぱいるだろうし絶対修行になるから!」 とか言っていたが、これじゃ全然修行にならないじゃないか。これなら家で修行のフルコースをやってい方が良かったな。筋肉は1日さぼるだけでだいぶ能力がさがってしまうからな。歩きながらでもできるような簡単なトレーニングならこなしているが、本腰をいれて行うトレーニングに比べたらはるかに効率の悪いものだしな。無意味な探索というのはできる限り避けたかったのだが……。腹の減り具合から見て日が沈むまであと2時間ぐらいってとこだろうし、日暮れまで探索して何も見つからなかったら終わりにして帰るとするか。俺はテツみたくダンジョンから出てくる財宝やら、ろ……ろす……ろすとてくのろじー? ってのにも興味ないし。ただ強いやつと戦いたいだけだからな。
そんなわけでモンスターの1匹もいないダンジョンに用はない。あー、モンスターの1匹でも出てこないのか。暇だ。暇の大安売りだ。早くモンスターでてこい。できることならボスモンスターよでてこい。俺の暇つぶしがてら筋肉の一部になれ。

しーーーん。

まー、そんなうまくいかないわな。取りあえずもう少し本格的なトレーニングを
しながら、残りを探索しようか。

しばらく探索しながら指先の可動域を広げる訓練をする。筋力を鍛える以外のトレーニングをしているとよく驚かれるが、実際の筋力を鍛えるよりこのような細かな柔軟などが良い筋肉を作るのには重要だ。見せる筋肉なら単に筋トレをするだけで十分だが、それを実戦で使えるレベルにするには、しなやかさを身に着け、引き締めなければならない。つけただけの筋肉なぞ重しと変わらん。実戦で使えるレベルまで洗練することで筋肉は筋肉たりえるんだ。

「む、音の反響が変わってる?」

筋肉とはかくあるべしと自身の考えをまとめていたところ、ふと自分の足音が変化していたことに気づく。気のせいかと思い、その場で何歩か足踏みをしてみるが、やはり若干だが先ほどよりも音が高くなっている。考え事をしているからと言ってこんなことに気づかんとは俺もまだまだだな。

「あっちの方に何かあるな」

周辺の音の反響の変化に気を配り、音の変化の原因のある方向にあたりをつける。これも日々の修行の成果だ。隣のビルの中をかけるネズミの足音を聞くのに比べたらはるかに楽だ。
以前テツとダンジョンに潜ってた時におんなじことをやったら、「おじさんの五感はどうなってんだよ!」 とか言われたが、こんくらいのことだれでも修行すればできるようになるだろう。あいつもまだまだ修行が足らんな。帰ったら稽古のひとつでも付けてやるか。せめて自分の家の中にいるネズミの足音ぐらいきけるようになってもらわんとな。

「原因はここか?」

自分の聞いた音に従って歩くと、広い行き止まりにたどり着いた。
壁をコンコンと叩いてみるが、予想通りやはり裏は空洞である。

「まったく、こんなので隠してるつもりか、まるわかりじゃないか。さて中には何が入っているのやら……まさか、モンスタートラップか! 出てこい、俺をわくわくさせるような強敵よ!」




拳に力をこめ、壁を殴る直前に脳裏にダンジョン前でわかれたテツの姿が浮かぶ。

「じゃ、おじさん。気を付けてね。まだ発見されたばかりのダンジョンでなにがいるかわからないし。まー、何が出てきてもおじさんなら大丈夫か。じゃ、いってらっしゃい。なにか見つけたら報告にくるんだよ」

そう言い来た道を引き返すように立ち去ろうとするが、思い出したかのようにこちらを振り向き言葉を付け足す。

「あっ、そうそうおじさん。むやみやたらとダンジョンのものをこわさないでね? ……こわしたらわかってるよね?」

あわてて拳をひっこめた。あっ、あぶねー、またテツを怒らせるとこだった。あいつ怒らせるとやばいんだよ。肉体的苦痛なら問題ないけども、あいつの場合精神的にグサッと刺さるんだよ。あれはつらい。延々と無言の圧力をかけられるんだぜ? 言い訳ももちろん聞かないし、何も言わず能面のような顔でこちらを見通す。ただそれだけだが、あの空気感はやばいただただやばい。熟練の武芸者でもあのオーラは出せん。というわけで賢い俺はきちんとした入口を探すぞ。さーてとどこから入ろうかな。

「ん、なんだこれ?石版? さっきまでこんなのあったか? てかなんだこの模様?」

入口がないかと辺りを見渡すと、左側に石版のようなものがあった。さっきこんなのあったか? 見逃したのかもな。まー、テツの恐怖のせいにでもしとこうか。にしても、なるほど、これはああいうやつだな。仕掛けを解くと扉が開くっていうそういうやつな。賢い俺にかかれば、こんな仕掛け朝飯前だぜ。
ポチ、ポチ、ポチ。カターン。
ほーれ、これで開くはず。

「ブー、くすくす。外れですー、おとといきやがれバーカーヤ「バン」プシュー」

はっ、あまりに腹立たしい声だったからつい反射的に殴ってしまった。……あー、これは完全に壊れたな。間違えた故障してしまったようだな。仕方ない調査のためだからな。もし危険な仕掛けだったら、調査に来たテツ達が怪我してしまうからな。俺はそれを防いだんだ。うん。そういうことにしとこう。そういうことにするしかない……。

で、この扉の開け方か。装置が故障してしまったから他の方法で開けないとな。
どうすっかな。………………セイッ!

「よし、開いた。さーて中には何が居るんだ」

考えるのに疲れたから取り敢えず殴ってみたら、扉が開いた。えっ、開けたじゃなくて壊したの間違いだろって、何言ってんだよ。裂け目に皹なんてはいってないだろ? これはこういうデザインの扉なんだよ。
さてと気を取り直して、中に入ってるものを拝見してみよう。筋力が条件で開く扉なんだ、中に入っているものにも期待できるな。
わくわく気分で部屋の中に入ってみると、大きな空間の中に円形の装置とそれに繋がっている大きな機械があるだけであった。

「なんだよ、ボスモンスターはいないのか、つまらんな。帰るか」

まー、知ってたさ。仕掛けとかなきゃ入れないところにモンスターなんか配置しないって、わかってたさ。でもさでもさ、なんだこのつまらん部屋は!
そう思い、踵を返そうとしたとき、脳内でピカーンと電流が走った。どうせならこの機械を弄ってから帰ろう。どうせ今から帰っても寝るのはダンジョンの中だしな。
テツだって機械を殴ったりしなきゃ文句は言わんだろう。さて、そうと決まれば早速。この赤いボタンが電源ボタンだろう。
ポチっ。トゥルルルトゥルン。ほーら起動した。ここのボタンを押して、こっちのボタンを押して、ほらこれで起動する。……何も起こんねえじゃねえか。まっ、そりゃそうか。おれ、テツみたいに動かし方わかった上で操作しているわけじゃないしな。取り敢えず寝て、起きたら帰るか。あの丸いところとか平らだし寝やすいだろ。さて、じゃあ寝る前に日課の筋トレをすませないとな。

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|time:7:48 |
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|limit:30sec. |
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装置のディスプレイだけが暗い部屋を照らしていた。






ガタンゴトン。

「地震か? 随分と揺れるな」

ガタンゴトンガタンゴトン。

「なんだ、まだ起きるには少し早いぞ」

ガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトン。

「あー、うるさいな。なんだってんだ一体。って、なんだあの龍は! こっちに向かって猛スピードで突進してく……ぐはっ!」

寝込みを襲うとは、つ、次は負けぬぞ、龍め……。






目を覚ましたとき、俺は昨晩と同じく、丸い装置の上にいた。

「なんだったんだ、今朝のあれは。夢……じゃないな、この痛みも幻痛じゃない」

龍がこの場に現れた?
いや、ぱっとしか見なかったが、こことは似ても似つかぬ風景だ。

寝ている間にどこかを徘徊した?
いや、俺に夢遊病の気はない。

ならば何が起こったのか?
テツならこういうときすんなり、答えを見つけ出すんだが、俺だとさっぱりだな。
うむ、考えても分からん。よし、寝てしまった分のトレーニングをしよう。

ゆっくりと息を吐き出し呼吸を一定に整える。そのままゆっくりと右拳を突き出す。もう一度呼吸を整え、右拳をゆっくりと突き出す。一連の動作の速度を徐々に上げ繰り返す、その際に動きが雑にならないよう常に指の先まで注意を払い続ける。右拳で満足のいく一撃を放てたら、今度は左拳、右足、左足と部位を変えて同様の形稽古を繰り返す。気をぬく時間など一瞬もない。一つ一つの動作を雑にやったらそれは修行ではなく、単なる無駄な運動となってしまうためだ。

一連の形稽古を終え、体に浮かぶ汗を拭う。少し休憩したら、次の修行にはいる。

迫る拳撃蹴撃をかわし、防ぎ、すきを見つけての反撃、かわされるが、焦らず体勢を立て直し次なる一撃を放つ。防がれお互いに距離を取り仕切り直す。今度はこちらから仕掛ける。相手の瞬きの瞬間に駆け出す。右拳の一撃。と思わせたフェイントでガードを吊り出し、それにより生まれた死角に入る。死角に入った俺を払おうと相手は回し蹴りを放つが、俺はその流れに逆らわず自らの体を後ろに倒し、両手だけを地面につけ体を支えこめかみに蹴りを入れる。そのまま着地し、揺らいでいる相手に回し蹴りでトドメを刺す。

息を出し、再び呼吸を整える。
今していたのは、仮想の自分との組み稽古だ。相手の動きを想像しながら、それに対応していく。側から見ると1人でたた動いているだけのようだが、とっさの対応力を鍛える良い訓練となる。上手くいった攻撃は実践で使える一つの攻め手となるし、ぎゃくに上手くいった攻撃は相手の対応が悪かったとも言えるため、同じ攻撃をされたときのしてはならない行動の見本となる。勿論かわす、防ぐを考えるのも自分のため、実際の戦いよりも自分に有利となるところが多いため実戦の中でそこは修正する。
そういえば、先日家でおんなじことをしていたらテツが「おじさん、何1人でパントマイムしてるの?」と聞いてきたが、まだまだ俺も修行が足りないな。その昔、師匠の訓練を見ているともう1人の師匠がはっきりと見えた。そのため師匠にそのことを尋ねたら、師匠は「それが一流の武道家の証」と一言答えて下さった。パントマイムと呼ばれるようじゃまだまだだ。師匠の域にたどり着くにはもっともっと修行する必要がある。
あっ、そのときに、テツがなんか勧めてきたな。なんだっけあれは、たしかあれは……し、しみゅ、しみゅれーしゃん? しすてむ? なんか仮想空間で実戦さながらに戦えるっていう不思議装置があるらしくて、それを修行に取り込んだらどうかとかそんな話だったな。
ちょっと待てよ、あの円形の装置ってもしかしてしみゅれーしょん装置じゃないか。だから実際に見たことない場所で、見たこともない奇妙な龍といきなり戦うことになったのか。しみゅれーしょんシステムなんて話を聞いたときは所詮仮想で現実に痛みのないトレーニングなんぞ緊張感のかけらもないだろうと馬鹿にしていたがこれは考えを改めないといけないな。不意打ちからなにからなんでもありで、あの現実感最高じゃねえか。
そんな装置がなぜ起動したのかだが、おそらく昨晩適当に操作していた時にうまくヒットしたのだろう。どう操作したのかも覚えてないから、もう一度おんなじことをやれと言われても無理そうだしな。あの装置を持って帰るのは辛そうだし、しばらくはここを拠点にして修行をするか。次こそあの龍にリベンジだ。
さてと、画面もまだ光ってるから装置は起動したままなんだろう。たぶん。となると次はいつ起動するかだが、

①一定時間毎に起動
②ある時間に起動

装置が起動するタイミングとしたら、このどっちかだとはおもうんだが、もし他のものだとしたら俺は知らん。違ったら一回テツをよんでこよう。テツのペースに合わせると往復するのに2日もかかってしまうという時間のロスは少しいたいが、あのレベルの修行ができるのだったらその価値はある。

さて、①だとしたら昨日の睡眠時間とかから考えて、今日の修行の最中にもう一度起動しているような気もするし、②の方向性でふんで、明日の朝方に起動すると思うことにしよう。明日の朝に再挑戦だ。さて、そうときまったら飯を食ってもう寝るか。睡眠もよい筋肉を作るためには必要不可欠だからな。徹夜なんてもってのほかだ。もってのほかだぞ。わかっているか。だからしっかりと寝て、リベンジマッチだ。

待っていろ、龍よ。

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|time:7:48 |
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ガタンゴトンガタンゴトン。

ふむ、どうやら予想は当たっていたようだ。前回と同じ景色。そしてもう少しでぶつかるというところまで迫り来る龍。

「昨日のように不意打ちなぞ食らわんぞ! 来い、龍よ!」

俺は構えをとり、龍を待ち受ける。
迫りくる龍、その瞳の中に何かの存在が見えた。何かと思い、意識を集中し、目を凝らす。瞳に映りこむのは恐怖に歪む人の顔だった。

「なっ……」

一瞬の硬直。しかし勝負においてその一瞬の硬直と言うのは致命傷だった。
一瞬の隙を逃さず、迫り来る龍。
迎撃も間に合わないと判断し、頭上のケーブルを使って上空に逃げることを選択する。
地面を離れ、ケーブルをつかんだ瞬間。

電撃が走った。

文字通り、高威力の電撃が。

「なっ、がっ、うっ! かはっ……」

薄れゆく意識の中、駆け抜ける龍が目に映った。
黄色い体色をした龍の姿が。
そうか、そうか……、お前雷竜だったのか。
雷竜の放つ電撃だったら、そりゃ強力だわ。

俺は昨日と同様に意識を手放した。






昨日と同じく丸い装置の上で目を覚ます。

「くっそ、あの龍は雷竜だったのか! 龍と戦うと言うのに属性を確認しなかっ
たなんて俺はバカか!」

龍は属性補正が強く、戦う龍の種類によって戦い方を変えるのが基本なんて駆け出し冒険者すら知っている常識だと言うのに……。俺は何をしているんだ。あれが実戦だったら俺は死んでいたぞ。いつ慢心できるほど俺は強くなったんだ。まだまだ俺は弱いと言うのに。今日は腐ったこの性根を叩き直さにゃいけんな。
しかしその前に考えなきゃならんことがある。

「龍の瞳に映りこんでいたあの人はなんなのだ?」

実際の龍であるのなら食われたり、取り込まれた人というので納得できるのだが、仮想の存在にそこまでの設定を付けるのであろうか。うむ……、考えてもわからんか。きっと戦いの最中に余計なこと考えるなということを伝えたかったんだろう。
よし、そうと決まったら、なめ腐ってたこの性根を叩き直すために今日は体を痛めつける。
そのために今日は走る。ただただ走る。
まずは部屋の中を走り回る。最初から全力疾走だ。後先なんか考えていたら、痛めつけにならん。
走る。走る。走る。走る。走る。走る。走った勢いで土埃や石などが部屋の中を舞い散り、そのうちのいくつかが装置に当たる。
装置にあたる音が聞こえた瞬間急制動をかける。

「やべぇ! 装置に当たるのはまずい。こわれてねぇかな」

…………ふぅ。たぶん大丈夫だな。画面はしっかり光ってるし、小さいが稼働音も聞こえる。たとえ、何か変わってもよくわかんねんだけどな。画面に書いてあること読めねえし。
さっきのことから反省して、部屋の中でやるのは危ないし外でやることにする。
というわけで戻ってきましたダンジョンに。ダンジョンで修行するなんて常識はずれ?
逆に考えろ? 
なぜダンジョンで修行すると常識はずれなんだ? 
あぶないからだろ。
なぜ危ないか?
モンスターや罠があるからだろ。
その点に関してならこの間ダンジョンを回ってた時に問題なしって判明したろ?
なら問題ないよな。もしもそういうのがあったとしても、試練が増えるだけだから楽しくね。ほら卵を割ったら双子でした! みたいなそんな感じで。
というわけで問題ないな。じゃあ、修行のつづきと行くか。ここならいくら埃を立てても平気だしな。
よしいくか。

タッタッタッタ。
タタタタタタタ。

ふーむ、しかし普通に走っても退屈だし、そこまで辛くないな。どうすればもっときつくなるか。
…………………。ピカーン。
走りながら案を模索していたら天啓が舞い降りた。
ヤベェな、俺これ天才じゃねぇか。よし、そうと決まったら実践だ。


というわけで俺は逆立ちをしている。
何をするのかというと走るのだ。はいそこ間抜けな顔をしない! 逆立ちしたまんま走るんだよ! 両手を交互に出してさ! これは疲れるはずだ。
よし、やろう。走り始める。右手左手右手左手。全身の筋肉を使うからこれはいいな。今度から普通に訓練で入れていこう。
走る。ひたすら走る。手が疲れても走る。頭に血が上っても走る。無心で走る。
走る。走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る。

パタッ。

気がつくと俺は倒れていた。頭に血が上って、脳に負荷をかけすぎたみたいだ。
さすがに脳みそは俺も簡単に鍛えられんからな。待てよ、これを続ければいずれ脳震盪とかの直接脳に来るダメージにも強くなるんじゃないか。よし、今後は少しずつ時間を伸ばしていこう。全身鍛えられて、脳まで鍛えられるとか、この訓練は凄すぎるぞ。そううしているとまた夜になったため、訓練を終え眠ることにする。明日は負けんぞ。黄龍よ。


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あくる朝。俺は再び龍と相見えるため大地に立った。んっ、今までと少し景色が違うか。場所が変わった? 昨日部屋の内で土埃を巻き上げたせいで少し設定が変わったか。まあ良い。地形が変わろうと俺のやることは変わらない。ただ龍と戦うだけだ。

ガタンゴトン。ガタンゴトン。

ほれ、龍の足音が聞こえてきた。
音が大きくなるにつれ、龍の姿が大きくなる。が、しかし。

「んっ、今日はおかしいな。昨日ほどの迫力がないぞ。速度も遅いな。どうしたのだ龍よ。腹の調子でも悪いのか?」

それに対する応えは何もない。咆哮もなく、ただ迫ってくるだけである。

「まあよい、来ないのならば、こちらからゆくぞ!」

そう意気込み、龍に向かってかけだす。自分が駆け出すことで、彼我の距離は加速度的に近づいていき、先手必勝と拳を構えたところで目の前がぼやけていった。






気が付くと、装置の上であった。今までに比べ、時間もそれほどたっておらず、龍と相見えた時間の直後といっても差し支えないほどである。

「ふむ、どういうことだ? 時間の感覚から言って、殴ろうとした所でこちらに戻ってきたようなかんじだよな。体の調子からいってダメージを食らったわけでもないし......となると、この装置の終了条件って、まさか時間指定か!?」

そう考えると納得だ。最初と2回目はすぐに龍に出会って戦い始めたのに対し、今回は龍と出会うまでにも少し時間がかかっていたから、その分で時間を余計に使ってしまったんだろう。
しかし、となるとあの制限時間だと1回ぶつかりあうのがせいぜいだな。どうするか。まあ、どうしようもねえな。最悪テツをよんでこよう。困った時のテツ頼みだ。とはいっても呼びに行くのはやっぱりめんどくさいし、できればやりたくないしな。明日もダメだったらびに行こう。
よし、そうと決まったら今日の修行だ。

今日は昨日自分への戒めをしていたせいで出来なかった龍対策の訓練をしよう。
あらゆる生命は大気中のマナを自身の力の一部として行使し生活している。マナには火・水などいくつかの属性があるのだが、たいていの生命はそれを気にせずに使用している。
しかし高位種族に分類される龍は、マナの中から自身にあった属性のマナを好んで使う。そのため、雷龍なら雷といった得意な属性というものが生じる。当たり前のことだが得意な属性の攻撃の威力はとてつもなく大きい。しかし逆に得意な属性があると言う事は攻撃の属性も読みやすいため、それに対抗する属性の魔力をまとっていれば攻撃の威力を激減できるほかに、こちらの攻撃の威力の底上げもできるということだ。
そのため、龍などと戦う際は魔力をまとうのが一般的とされる。こないだは忘れてしまったが、本来あれは自殺行為である。
というわけで魔装と呼ばれる、魔力をまとう技術の訓練を今日はしようと思う。
この魔装であるが、この技術は身体能力の底上げも出来るため、龍などと戦うとき以外でも、当たり前のように使われる。俺の場合、生身の筋肉を鍛えぬくことで、総合的な強さをあげたく思っているため、できる限り使わないようにしているが。もともと強い力を持ってるやつがさらに強い装備を付けた方が強いだろ、俺はそういうのをめざしているんだ。
というわけで今日の訓練だが、まずほどほどの大きさ、握りこぶしより2・3周り大きいぐらいをイメージしてくれ、の石を用意するだろ。それを壁に向かって殴り飛ばす。で、殴り飛ばした石を殴り返す。これの連続だ。たったこれだけだ。
えッ、なにいってるかよくわかんないって、仕方ないからもう一度説明してやろう。
壁に向かって石を殴り飛ばす。走って石が壁に着く前に回りこむ。石を殴り飛ばす。回りこむ。殴る。回りこむ。殴る。これだけ。昔一人キャッチボールとかしただろ。それとおんなじ要領だ。このときに注意することだが、まず、石より先に回りこむために足を魔力でまとい、速度をあげること。さすがに俺も生身の肉体だと少し速さが足りない。
次に石を殴るときに、拳の強化もそうだが、同時に石も強化しなくてはならない。そうしないとすぐに石が砕けてしまう。あとは石の中央を殴り続けることぐらいか。
まっ、御託は置いといてやるか。

フッ、フッ、フッ。

殴る。走る。殴る。走る。殴る。走る。殴る。走る。殴る。走る。殴る。走る。殴る。走る。殴る。走る。
殴る。走る。殴る。走る。殴る。走る。殴る。走る。殴る。走る。殴る。走る。殴る。走る。殴る。走る。

バキッ。

ひたすら繰り返していると、ついに石が砕け、その破片が装置へと飛んでいく。

「ヤバっ!」

終わりだと思い、足の魔装を切っていた俺が間に合うはずもなく、石の破片は装置に突き刺さった。

「……装置は無事か? モニター。異常なし。稼働音。異常なし。…………たぶん大丈夫か? 古代の技術思ってた以上につよいな」

どうやら壊れてはいなさそうでひと安心だ。壊したらリベンジがかなわなくなるのももちろんだが、テツがこぇぇ。
まー、無事なようだし今日の修行も終わりにしようか。明日こそはリベンジきめてやる。


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|time:7:48 |
|place:KOIWA(+3) |
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よし、今日こそはリベンジを決めてやる。ふむ、また景色が違うな。また新しい場所にきたようだな。

ガタンゴトン。ガタンゴトン。

「今日は早い、お出ましだな。さてかかってこい。今日の俺は今までと一味違うぞ」

迫ってくる龍に合わせて魔装を展開する。が、

「えっ、魔装が展開できないだと、いったいどういうことだ。ちょっとまっ……ぐはっ……」

魔装の展開も出来ずに勢いよく跳ね飛ばされた。
宙を舞う体。
つい先日もあったような既視感。
薄れゆく意識の中、ひたすら自問する。なぜだ、なぜ魔装が展開できないんだ。
……まてよ、この世界大気中にマナが……。
意識を手放した。






いつものように装置の上で目を覚ます。
しかし体のいたみはいつもの比じゃない。全身が激しい痛みを訴えている。

「いってぇ、まさか魔装が使えないとは思わんかった。しっかし驚いたな。まさかあの世界、大気中にマナがないなんて、原料たるマナがなきゃ、魔装も使えるわけないよな」

そう、あの世界にはマナが一切なかったのだ。少ないわけでもなく全くなかった。あれでは生活するのも苦しいと思うのだが。と思ったが、仮想世界だから生活する必要もないのか。
むっ、しかしあの龍は雷撃も使えるのか……。なるほど魔装を使わずに龍をたおせというハードモードというわけか。面白いじゃねえか。本気の俺の筋肉を見せてやろう。小細工抜きの力をな。
さて、今日なのだが、今朝の一撃もあるが、なにより昨日の魔装の訓練の疲労も大きい。明日究極の一撃を放つために今日は休養をとろう。時には休みも作る。これもよい筋肉を作るために必要なことだ。
では、今日はひたすら寝るか。


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|place:KOIWA (+3)   |
|limit:30sec. |
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「いやー、ひどい目にあったすね。いきなり『てけてけ』のようのものにひかれて、岩にうもれるなんて、もう少しで生き埋めになるとこだったすよー。ん、なんすかねあの装置。むっちゃ光っててもう触ってくださいって言ってるじゃないっすか。これはいじくるしかないっすね」

暗い部屋のなかに、突如明るい男の声が響き渡る。男は若く、成人しているかどうかも怪しいほどである。
男は装置まで進むと、指をせわしなく動かす。そのたびにカタカタという音が響き渡り、画面がせわしなく変化する。
やがて満足したのか装置から男は離れる。

「こんくらいあった方が面白いっすね。では行きますか異世界に」

男は薄い気配をさらに殺し、丸い装置に歩み寄りその時を待つ。異世界へと旅立つその時を。


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|time:7:48 |
|place:SHINKOIWA (+3) |
|limit:30hou. |
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よし、無事きどうしたな。今日こそリベンジ決めてやるからな。
顔を上げると一番最初にきた場所の景色であった。空気を吸い、精神を統一する。
今日こそ止めると決意の火を燃やす。

ガタンゴトン。ガタンゴトン。

きたか。よしかかってこい。今日は小細工抜きだ。何があろうと止めてやる。
そう決意し眼前の龍を見据える。龍はより一層速度を上げてこちらへと突き進んでくる。
俺はじっとそれを見つめながら、構えとともに心を整える。
力をためる。
まだだ、まだひきつけろ。
もっとちからをためこめ。
そして、彼我の距離が0になる瞬間ため込んだ力を解放し、龍をうけとめる。
おしこまれるが、地面にある横木を支えにおしかえす。

力の均衡は10秒と続かなかった。
龍が活動を停止したのだ。
追い打ちをかけようとするが、すでに龍は活動を停止していた。

「渾身の一撃を止められて、自ら活動を止めたか。その心意気あっぱれだ。お前との闘い楽しかったぞ」

そういい、好敵手に静かに背を向ける。振り向く際に龍の瞳に映る人に対し、安心しろと笑みをうかべた。
訓練だし、あの者は俺が何かしなくてもたすかるだろう。どういう風に助けるかは知らんが、そこは流れにまかせるとしよう。
にしてもなかなか戻らんな。普段だったらもうとっくに戻る時間なんだが、はっ、まさかこれはいわゆるボーナスステージというやつか。龍を倒したから、次の試練に入れる的な。
そうと決まったら探索だ。
いやー、探索と言えばこうでなくっちゃ。


探索をすると、灰色の石畳の上を鉄の猪が疾走している。
猪とのかかり稽古だと思い、石畳で出来た闘技場に足を踏み入れる。
その瞬間猪はけたたましい鳴き声をあげる。やる気は十分ってか。
さあかかってこい。そう意気込んだ瞬間。視界が暗転した。


「お帰り、おじさん」

目を覚ますといつもの丸い装置の上であった。
いやー、今日は疲れたなーもう寝ちゃうかー。

「お・か・え・り。おじさん」

はいきづいていましたよ。目を覚ましたらかわいい女の子の顔が目の前にあったんだよ。男ならだれでもうれしいと思うだろ。俺もうれしいさ。その女の子が額に青筋を浮かべてなければ。

「おう、ただいまテツ、久しぶりだな」
「うん、ひさしぶりだね。オジサン。私がダンジョンに入る前に言ったこと覚えてる?」
「お、おう……俺が可愛い姪のいったことを忘れるわけないじゃないか」
「か、か、かわいいって……もう、じゃあ何言ったかいってもらってもいい」
「『気を付けてね、大好きなおじさん(はぁと)』だろ?」
「そ、そ、そんなこと言ってないわよ! ダンジョンの中の物を壊さない、なにか見つけたらすぐ報告でしょ!」

おうおう顔を真っ赤にしちゃって。可愛いなこいつ。

「ああ、そんなこといってたな。テツが可愛くてすっかり忘れていたよ」
「だからまた、はー、おじさんごまかそうとしたってそうはいかないよ、どうして報告こなかったの」
「修行が楽しかったです!」

これ以上ごまかしたらあかんやつだなこれ、長年の付き合いからこれ以上やってはいけないラインは良く知っている。

「まったく、もういいわ。ぶじだったんだし」
「じゃあ、お説教も……」
「それは別。あとでしっかりとやるから覚えていて」
「はい……」

ダメだったか。まあおれが悪かったんだし甘んじて受け入れよう。
あっ、そうだテツに提案しとかないと。

「テツ、後でしみゅれーしょんシステム作ってもらってもいいか」
「別に構わないけど、なんで?」
「いやー、こいつがすごくてな。ちょっとなめていたわ。だから家でもやりたいと思ってな」

そういってお世話になった装置を指さす。

「これ、シミュレーションシステムじゃないよ」
「えっ……」
「そっか、おじさん誤解していたんだ。これ異世界転移装置だよ」
「えっ…………」
「ちなみにもう少しでマナ切れてもどってこれなくなっていたよ」
「えっ………………」

てことは、俺はリアルの命の危機にあってて、下手したらこっちに戻ってこれなくなっていたってことか……。あぶねー!! あぶなすぎるだろ俺!!

「そのー、テツ。本当に申し訳ない。そして本当にありがとう」

謝罪と感謝を心から伝えるため真摯に頭を下げる。

「んっ、いいよ。ちゃんと無事に帰ってきてくれたし。帰ろ。ちゃんとしたご飯食べてないでしょ」
「ああ。久々にまともな飯だ」
「ふふっ、今日は頑張ってごちそうつくるね」
「おう、期待してるぜ」
「でも、その後にお説教だからね。ロストテクノロジーは本当に危険なんだから、おじさんはそれをしらないと」
「ええ、まじかー」
「まじです」

並んで歩く二人の背中からは幸せなオーラがあふれ出ていた。










そのころ

「あー、あれが自動車っすねー、であっちが飛行機っすかー。本当に空を飛んでるっすね―。ところで、もう30時間はとっくに経ったはずなんすけど、いつになったら帰れるんっすかねー。あっ、あれが色々な情報が詰まっているというパソコンっすか。どういう仕組みなんすか。すごい気になるっす。未開の技術がわっしを呼んでるっすー」



おしまい




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第三十二回さらし文学賞 | CM(0) | TB(0) 2017.01.05(Thu) 00:00
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