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トメルの電車でGo!

「やっべー、遅刻だー!」
 俺の名前は熱波トメル。元気が取り柄の小学五年生だ。好きな食べ物はカレー、
得意な科目は体育、そして誰にも負けない特技は――
「っと、自己紹介なんかしてる場合じゃねえ! 急がないと新学期早々……ん?」
 エンジンマックス、ターボ全開でいつもの通学路を走っていると、先のT字路
の角で三人の男たちが、おじいちゃんを取り囲んでいるのが見えた。
「おっと、何やら不穏な空気……」
 学校と方向は反対だったが、気がつくと俺の体はT字路に向かっていた。
「おーい、そんなところで何してんだー」
 すると、男の一人がこっちを振り返って、
「んだと……何だ、ガキか。ガキは学校の時間だろう? さっさと失せな!」
 見ると、その男はサングラスにスカジャンを身に着けていた。いや、そいつだ
けじゃない……男三人共がスカジャンを着ていた。それに一人はドレッドヘアー、
一人はリーゼントの……この格好は完全に――
「まさかお前たち……不良か!?」
「あーあ、小僧だから見逃してやろうと思ったんだがなあ……バレちまったらしょ
うがねえ」
 ドレッドヘアーの男は俺に歩み寄り、ぐいっと顔を近づけてきた。
「そうだよ……俺達は泣く子には優しいスカジャン系不良グループ、とっとこ破無
野郎だ!」
「とっとこ破無野郎……最近、ここら辺でブイブイ言わせているという、あの今話
題の不良グループ……!」
「まさか、こんな小僧にも名前を覚えてもらっているとはなあ。俺たちも有名に
なったもんだぜ、なあスカジャンノ助」
 すると、リーゼントの男が
「そうっすねえ、リーダー」
 と、にやにやしながら言った。
 ということは、このドレッドヘアーの男があの、とっとこ破無太郎のリーダー
……いや、相手が誰だろうと関係ねえ!
「とにかくそのおじいちゃんから離れろ! どうせ不良なんだから、良からぬこ
とをしてたんだろ!」
「おいおい、俺達はただこのおじいさんと仲良くなろうとしただけだぜ? なあ
スカジャンノ助」
「そうっすねえ、リーダー」
 な、仲良く? 何だ、こいつら嘘をついているのか――
「ち、違う!こやつらはわしに、らいんんを交換しようとか、ついたーをふぉろ
ーさせてとか、そんな意味不明なことを言って、混乱しているさまを見て楽しん
で……いるん……じゃ……」
そう言い終わるとおじいちゃんはバタッと倒れてしまった。
「お、おじいちゃん!」
 あんな年寄りにLINNEやTwiterが理解できる訳がない。それを知っててこいつ
らは……!
「もう許せねえ……俺の怒りは大気圏を越えてスペースマックスだぜ! そのおじ
いちゃんを返してもらう!」
「ほう……このとっとこ破無野郎のリーダー、スカイデッド・ジャンクを前にして
まだ吠えやがるか。面白い……ならば俺とSTBで勝負だ! もし俺に勝つことが
できたら、このおじいさんは解放してやろう」
 STB――十五年前突如現れた、最初にして最強のSTBプレイヤー失楽園ゴウ
カによって、今もなお爆発的なブームになっている電車を素手で止める新感覚ス
ポーツ、ストップトレインバトルで勝負だと!?
「いいぜ……その勝負受けて立つ!!」
「では今日の十五時に、ウェストバーチー駅に来い!後で泣いて、俺達に優しく
されても知らねえからな……行くぞスカジャンノ助、それに……えーっと……スカンジ
ナビア半島!」
「ちょ、リーダー冗談きついっすわー。俺の名前はスカンジナビア半島じゃなく
て良介です」
「あ、ああそうだったな!すまない、すまない。よし、じゃあスカジャンノ助に
あと…………うん、二人共行くぞ!」
『ヘイ!』
 そう言って、三人組はおじいちゃんを連れて去っていった。 
 必ず俺はおじいちゃんを助け出す――待っていろ、スカイデッド・ジャンク、ス
カジャンノ助、それに…………スカンジナビア半島!!


「……それで、新学期早々遅刻したわけ?」
「そうだよ……ってかなんで付いてきたんだ?」
 こいつの名前は北見ナミ。同級生で俺の幼馴染でもある。口うるさく、いつも
俺に小言を言ってくる、やかましい女だ――
「トメル一人だと心配だからね。というか今、私の悪口考えてなかった?」
「な、そんなわけ無いだろ! お前の悪口なんて……今まで考えたことないぜ! 
ハハハハハハ……」
 おいおい、エスパーかよ。北見は変に勘が鋭いからな。こいつの前では隠し事
はできねえや……
「……まあ、いいわ」
 そして、北見は自分の腕時計をちらっと見て
「ところで、待ち合わせ場所はこのウェストバーチー駅で合っているのよね? 
もうとっくに三時は過ぎてるけど……」
「待ち合わせはここで確かだぜ」
 ただ、あの不良グループのことだから、もしかするとこれは何かの罠だったの
かも……
 そんな風に思っていると、遠くからスカジャンの3人組がおじいちゃんを連れ
て、こちらに向かってきた。
「すまねえなあ。このおじちゃんを連れてスターパックスでカフェをしていたら、
ついつい遅れちまったよ。なあ、スカジャンノ助」
「そうっすねえ、リーダー」
「ま、まさかこのおじいちゃんをスターパックスに連れて行ったの!? ショー
トやトール、グランデ、あんなにたくさんの横文字を見たら、私達でもギリギリ
なのに、ましてこんなおじいちゃんだと精神が崩壊してもおかしくないわ! あ
んた達、なんてひどいことをするの!」
「……北見」
「ハッハッハー。小僧と同じでこのお嬢ちゃんも随分と威勢がいいな。なんだ、
お前の彼女か?」
「な、北見とは別に彼女とかじゃ……」
「そうよ、誰がこんなSTBバカの彼女よ!」
「おい、誰がSTBバカだ!」
「ハッハッハー。まあまあそこら辺にしとけ。夫婦喧嘩は不良でも食わねえって
な」
「な、北見と夫婦って……!」
 くそー、北見と一緒だと色々調子狂うなあ。やっぱり連れてこなきゃよかった
……
「そろそろ本題に入ろう。今回のSTBで止めるのはソーブ線の電車だ」
「ソーブ線だって!」
「え、トメル。ソーブ線ってそんなにすごいの?」
「まあな。電車の機体自体の癖はなくスタンダードなものだが、ただスピードと
パワーからストッピングレベルは上級の星四になっている」
「じゃあ大丈夫なの? いくらSTB好きとは言え……」
「ああ……」
 確かに星四レベルは、普通のアマチュアで止められる人は多くない。だが――
「相手が強ければ強いほど燃えるのも確かだぜ!」
「ハッハ、やっぱり小僧おもしろいな。ソーブ線と言ったらビビって逃げ出すか
と思っていたが、いいだろう。その心意気に免じて、普通は互いの電車を止める
までの時間で勝負するものだが、今回は特別にお前がソーブ線を止められたらそ
れで勝利、このおじいさんを解放してやるということにしよう」
「別にタイムアタックでも負けないけどな。ただ、今はおじいちゃんの救出が先
決だ。その勝負乗ったぜ!」
「そうか、じゃあそろそろ準備するんだな。奴さん来たぜ」
 俺は線路へ飛び降りた。
「ソーブ線……悪いがここから先は行き止まりだ!」
「頑張れー、トメルー!」
 ブオンと雄叫びを上げて、電車が俺に向かってくる。
 恐らく俺の身体では、ソーブ線を止めるパワーはない。だが俺には――
 電車はスピードを緩めることもなく急スピードで目の前に迫ってくる。俺はグ
イッと腕を前に出した。
「さあ……来い!」
 ガツンと重い衝撃が身体の中に走った。
「くっ……」
 さすがソーブ線――あの巨体からは想像の付かないスピードから繰り出される突
進は、なるほど星四レベルのことはある。
「どうした小僧。あれだけ言っていた割には、電車にふっとばされないよう踏ん
張っているのがやっとみたいじゃないか」
「そ、そうだな……これだけの重量級は俺も初めてだ。たしかにこれは小学生の筋
力じゃあ無理だな……」
「それじゃあ降参するか?」
「へへっ冗談よせよ。機体が重すぎるのなら軽くすればいいだけのこと!」
「なんだと!?」
 そう、STBはただパワーだけのスポーツではない。テクニックでいくらでも
力の差を埋めることができるんだ――
「妙技、フリクションストップ!!!」
 そして俺は、機体の前面を上下に手で擦り始めた――
「ば、馬鹿な!? 擦ることで機体を削り、重量を減らしているのか!」
 このフリクションストップは親父の必殺技だった――こいつで止められねえ電車
は無い!
「うおおおおおおおお!!!!」
「す、すごい!電車の勢いがどんどんなくなっていく……もう少しよトメルー!」
 俺は擦るのをやめ、一気に前へ力を入れた。
「これで、終わりだーーー!!!」
 プシューと車両から煙が上がり、電車は止まった――
「……まさかフリクションストップが見られるとはな。お前ら、おじいさん置いて
帰るぞ!」
『ヘイ!』
 そう言い、あのスカジャン三人組はさっさとどこかへ立ち去って行った。
「やったねートメルー!」
 北見はホームから飛び降り俺に抱きついてきた。
「な、お前」
「まさかあんたがあんなでっかい電車止めちゃうなんて! 私ちょっと感動しち
ゃった」
「ちょ、そんなことよりもおじいちゃんは……今回の目的はそれなんだから」
 それに、いきなり抱きつかれるとか普通に恥ずかしいし……
「あ、そうよね! おじいちゃーん」
 北見は俺をパッと離しまたホームに戻った。あいつにとってハグはそんな特別
なことじゃないのか……
 そんな複雑な思いを感じていると
「少年よ、助けてくれてありがとう」
「おじいちゃん! 身体の方は大丈夫か? 怪我とか……」
「おかげさまで大丈夫じゃよ。それよりも、お主のSTB見事じゃった。あんな
胸が熱くなるストッピングは久々に見たわい」
「おう、ありがとう! それにしても、おじいちゃんはストッピングとかSTB
に結構詳しいんだな」
「まあな。こう見えても一時期はプロのSTBプレイヤーとして活躍してたんじ
ゃ。ただ、今は引退してコーチをやったりしているがのう」
「そうだったのか。それは驚きだぜ! ところで、おじいちゃんの名前はなんて
言うんだ? プロのプレイヤーだったのなら、もしかして知っているかも……」
「老崎オキナじゃ」
「え……」
 老崎さんと言ったら俺の――
「そうじゃ、お主の亡き父――熱波ススムの元コーチじゃよ」

                                    
                  続く




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第三十二回さらし文学賞 | CM(0) | TB(0) 2017.01.05(Thu) 00:00
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