FC2ブログ
« 2018 . 11 »    1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告 | CM(-) | TB(-) --.--.--(--) --:--

チョコちゃんの思い出日記

○月●日
 出会い記念日。
きみのおばあちゃんが、僕をきみに与えた。まだきみは小さかったから、きっと後で思い出そうとしても、僕との出会いなんて覚えちゃいないだろう。
それでも良いさ。きみにはきみの、僕には僕の大切な思い出がある。誰かが覚えていれば、それは決して無かったことになんかならないから。

 ●月△日
 きみは随分と僕を気に入ってくれているようで、何時でも何処でも一緒にいる。最近気が付いたのだけれど、きみは僕のことを『チョコちゃん』と呼んでいるのだね。それってもしかして、僕の茶色い体がチョコみたいだからかい? だってきみ、そこの黄色い服を着た羊さんは『レモンちゃん』って呼んでいるみたいじゃないか。
 決して悪くはないよ。むしろ名前を付けてもらえると、きみの中でちょっと特別な地位を貰ったような気がして嬉しくなる。でも、やっぱりきみの傍にいる僕以外の子も名前で呼ばれているところを見ると……ちょっと嫉妬しちゃうなぁ、なんて。

 △月▲日
 ぬいぐるみが大好きなきみは、僕以外にもたくさん仲間を持っていたはずなのに、今朝起きたら、彼らはほとんど姿を消していた。部屋に戻ってきたきみの、少し寂しそうな顔。嗚呼、もしかして、消えた彼らは今頃ビニール袋の中で押し合い圧し合いしながら――。
 可哀想に。確かレモンちゃんも、最近買ってもらったばかりではなかったかい? 確かにきみのベッドの上は、いつも僕や仲間たちで溢れていたから、あんまりたくさんあっても邪魔だと思われてしまったのだろう。大人はいつもそうだ。きみは彼らのことを邪魔だなんて一度も思ったことは無かったのに。
 きっと、こういうときは僕の出番。僕は彼らよりもっと前からきみと一緒にいて、僕ときみが仲良しだってことも、大人たちは知っている。だから僕は救われた。
 大丈夫だよ。何処か遠くでゴミと一緒にさよならしてしまう彼らに代わって、僕がずっときみのことを見ているからね。

▲月▽日
 ここのところ、また少しずつ仲間が増えてきたように思う。拾い物、貰い物、買ったもの。出身は皆違うけれど、きみがいない間にこっそりお話するくらいには仲良しだ。どうやら皆は、誰よりも長くきみと一緒にいる僕のことをリーダーみたいなものだと思っているようで、敬ってくれたり、持ち上げてくれたりする。皆のお兄さんとして慕われるのは悪い気がしないけど、人間みたいに厳密な上下関係にはあまり興味が無いから、敬語で話されるとちょっとくすぐったい。ぬいぐるみなのだから、動けない分もっと自由にいこうよ。

 ▽月▼日
 最近きみは忙しそうだ。もう常に僕を連れて歩くには大きくなりすぎちゃったから、その分何かとやらなきゃいけないことが増えたのだろうね。
それでも、たまには……ほんのちょっと、疲れたときだけでも良いから、僕の傍にいてくれると嬉しいな、なんて。そんなこと考えても、きみは僕の気持ちなんて分からないし、多分一生かけても届くことはないだろう。
でも、あれから10年以上経った今でも、僕がきみと一緒にいることを許してくれること。それは堪らなく幸せなことだよ。

 ▼月■日
今日、また久しぶりに仲間が増えた。この子たち、きみが作ったのかい? 凄いじゃないか。ここ数日の様子を見るに、しばらくはのんびり出来そうなのかな。だからこの子たちを作ったのか。不格好だけど、なかなか可愛い。きみも随分と成長したものだね。

 ■月◇日
 もう何日も、きみの顔を見ていない。家の人が言うに、きみはここから少し離れた所に住み始めたらしいじゃないか。
 これもまた、仕方のないことだ。きみにはきみの、僕には僕の大切なものがある。それに、今の僕はもうきみだけのものじゃない。相変わらず仲間たちのボス的存在。寂しくなんて、ないよ。多分。

◇月*日
 ほらほら、急いで。あとちょっとで締切だよ。
 夏休みに帰ってきて、僕のことを書いてくれるのは嬉しいけど、間に合わなかったら何もかもお釈迦じゃないか。
 この辺で終わりにして良いから、早く先輩とやらにメールとかいうことしなよ。
 大丈夫。書き切れなかったことも、僕ときみが覚えていれば、無かったことにはならないから。


使用テーマ
・ファンタジー
・締切
・届かぬ○○
・もう一度会いたい
スポンサーサイト
第三十一回さらし文学賞 | CM(0) | TB(0) 2016.08.13(Sat) 12:00
copyright © 千葉大文藝部活動情報 all rights reserved.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。