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おとぎ話のような

   おとぎ話のような


 今日は雨だから出かけられないね、って笑う。
 ベッドの片隅、君は膝を抱えている。
 今日は寒いね、とストーブをつける。
 天国に一番近い場所。この先はもうない。
 君は顔をあげた。何がそんなに悲しいの。
 灰色の瞳は今日の空と同じ色だね。
 何か温かいものでも食べる、と訊いても知らない顔。
 何を必要としていたのだろう。この場所からは分からない。
 言葉は辛うじて意味を手放していない。
 コーヒーが美味しいよ、と君にマグカップを向ける。
 ああもう、少しは私を見て欲しい。
 ざらついた絶望と流行性感冒から何千マイルも転がり落ちて。
 世界の天井が手(て)りゅう弾で煤だらけになった朝。
 神さまは手のひらを合わせた。
 
 何もする気が起きないね、って笑う。
 夢の続き。後味がわるいなあ、もう。
 君は鉛の心臓を洗濯機にかけた。
 大きな燃料タンクの周回軌道上。
 流星群とお菓子な家。どこかに王子様がいたの。
 私は君といるだけ。ただ、それだけ。
 素っ気なくていいよ。返事をしてよ、ああもう。
 脱脂粉乳とマーブルチョコが懐かしいの。
 君にそう訊いても知らない顔。
 不思議の国は鏡の向こう。ああ、でもだって要らないね。
 夜はもう来ない。凝ってしまった雲の向こう。
 子ども心とコンクリートを土星の環に手放した。
 海が人口筋肉に満たされた朝。
 神さまは手のひらを合わせた。

 マフラーと手袋がよく似合うね、って笑う。
 君はマッチを擦った。
 首を絞めて欲しいな、って笑う。
 泡になった女の子。屍体好きの王子様。
 螺旋階段を上っていた途中。免疫診断の結果も待たずに。
 誰かが幸福になっても幸せにならないねって。
 誰かが不幸になっても幸せにならないねって。
 ここはかび臭いね、って笑う。
 君は澱んだ鼻歌を響かせる。雨と同じ音。
 ああもう、うまくいかないなあ。
 うずまき貝の化石は包み紙の中で時間を楽しんでいる。
 栄養たくさんの鳥かごの中で発育不全を起こし続けて。
 電卓が宇宙の真理を割り切った朝。
 神さまは手のひらを合わせた

 神さまが手のひらを合わせた朝。
 世界が小さくなった朝。
 それからずっと私と君だけ。
 ああもう、返事をしてよ。泣きたくなるから。
 今は本当にそれだけなのに。


「本当は何も望んでいないくせに」
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第二十九回さらし文学賞 | CM(0) | TB(0) 2015.01.06(Tue) 13:47
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