FC2ブログ
« 2018 . 10 »    1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告 | CM(-) | TB(-) --.--.--(--) --:--

森のクリスマスツリー

   森のクリスマスツリー


 冬を迎えた森は、一日じゅう雪が降って、降り積もった雪はマシマロのようにふかふかしています。森にすむ動物たちはそれを一歩ずつ踏みしめながら、みんなが集まる広場へ歩いていきます。
 広い森のまんなかには、とても大きい木が一本、森に傘をさすようにして立っています。動物たちは木の下にすわって、たくさんお話をします。今日はリスが、朝から何やらそわそわとしています。何かみんなに話したいことがあるようです。
「ねえみんな。そろそろクリスマスがくるね」
 動物たちは、森にやってくる木こりや花を摘みに来る女の子たちから、人間がふだんどんなことをして暮らしているか教えてもらっていました。そしてこの前、クリスマスという日があることを聞いたのでした。
「人間たちはいいなあ。サンタさんから、プレゼントがもらえるんでしょう? ぼくも、こうらに付ける新しい飾りがほしいよ」
 川から上がって来たカメが、こうらにくっ付いているボロボロのリボンをながめて言いました。ほかの動物たちもプレゼントが欲しいようです。みんなが頭の中で、自分の欲しいものを想像し始めました。
 そんななか、リスだけはもどかしそうな顔をして、そこいらを走り回っています。そしてふいに大きな声を出して、みんなの注目を集めました。動物たちは目をぱちくりさせながら、リスを見つめています。
「プレゼントもいいけれど」リスは楽しそうな顔で話します。「みんな、クリスマスツリーを作ってみないか?」
 それを聞いた動物たちは首をかしげました。クリスマスのことは知っていましたが、クリスマスツリーのことは知らなかったのです。木の実を潰してジャムを作っていたキツネが、「クリスマスツリーって、なあに?」とたずねました。
 リスは、えへんとせき払いをしてから、この前初めて知ったというクリスマスツリーの話を始めました。
「この前ちょっと町へ行ったときに、パン屋さんの前にきらきら光る植木があるのをぼくは見つけたんだ。そう、ちょうどここの木みたいな、てっぺんのとんがった木だったな。こんなに大きくはないけれど。それでその木には、宝石みたいにかがやいているボールや、金色のすず、真っ赤なバラの花、おいしそうな木の実とか、素敵な飾りがいっぱいしてあった。てっぺんには星をかたどった飾りがあって、空から落ちて来て突き刺さったみたいになっていた。ぼくがその木を見上げていると、突然ぴゅうっと風が吹いて、その飾りが揺れて光ったんだ。きれいだったなあ。光の粒が、降っていた雪の中にやんわり染み込んでいったみたいだった。それをきれいだと思ったのは、どうやらぼくだけではなかったみたいだね。いつの間にか、パン屋の前には人だかりができていて、みんなが幸せそうな顔をして、飾られたその木を眺めていた。きっとぼくも幸せな顔をして、木に見とれていたと思う。あとでその木のことをパン屋のご主人にたずねてみたら、その木はクリスマスツリーというもので、クリスマスになると人間たちは木に飾り付けをしてツリーを作るんだってさ」
 話が終わると、リスは自慢げな顔になって、素敵でしょ?とみんなをながめ回しました。
「とっても面白そう! 私も飾りつけをやってみたい!」
 ウサギはその場で跳ねながら、わくわくしたように言いました。ウサギだけではありません。ほかの動物たちも、リスの話を聞いてクリスマスツリーに興味しんしんのようです。カメはこうらに付いているリボンを見せて、これも飾りに使えるかなあと話していてます。そのうちに、ツリーを作ってみたいという声が、あちらこちらから出てくるようになりました。
 見はからったようにリスは切り株の上に登ると、みんなを見渡して言いました。
「それで、きいてみたいのだけれど、今年の冬は森のみんなでクリスマスツリーを作ってみようよ。ここの木を飾りつけて、森にやってくる人や動物たちに見せてあげるんだ。きっとみんな、おどろくぞ」
 すると動物たちの目はもうらんらんとかがやいて、頭の上で枝を伸ばしているおおきな木が立派に飾り付けられた様子を夢見ていました。その場にいた動物たちはみんな、ツリーづくりをやると決めたようでした。
 ただ、カラスだけは、クリスマスツリーを作るのをやらないようです。リスがどうしてだいとたずねるとカラスは、
「鳥は光るものが苦手なんだ」と笑って、ねぐらにさっさと帰ってしまいました。


 クマは川べりで魚を取りながら、クリスマスツリーの飾りつけのことを考えていました。クマの住んでいるところには、きらきらしたボールや光るすずはなかったので、一体何をツリーに飾り付ければよいか、迷っていたのです。考えごとをしているので、魚はうまく取れません。近くにいるカワセミやカモが、クマの横でどんどん魚を食べてしまっています。
「クマさん。あんまりぼうっとしてると、ぼくたちがお魚ぜんぶ食べちゃうよ」
 カワセミが言っても、クマはうーんとつぶやいたきり、また考え込んでしまいます。カモに「一体なにをなやんでいるの」とたずねられて、クマはようやくツリーのことを話しました。
「きらきら光るものなら、クマさんでも持っているじゃないか」カワセミたちは笑いました。「お魚は遠くから見ても、かがやいているよ」
 それを聞いたクマはハッとして、それからは一生けんめい魚を取りました。食べるものがなくなったので、カワセミたちは川下のほうへ去っていきました。
「そうか、お魚かあ。なんで気が付かなかったのだろう、ぼくはこんなに素晴らしい飾りを持っていたのに!」


 ウサギは自分のねぐらに帰ると、身体に生えている真っ白い毛を口や手を使って抜き始めました。ウサギは、自分の体毛をツリーの飾りに使うようです。
「これだけ白くてふわふわなら、きっといい飾りになるわ」
 ウサギはもう張り切って、毛を抜いていきます。ふわふわの毛が、ウサギのねぐらには高く積まれていきました。反対に、ウサギのからだは毛が抜けて細くなっていきます。あれだけ大きい木なのだから、きっとたくさんの毛が必要だといって、ウサギはずいぶんたくさんの毛を抜いてしまいました。
 夜になってねぐらの中が冷えてくると、ウサギは大きなくしゃみをしました。その勢いで、いくつかの白い毛は外へ飛んでいきました。
「待って、私の飾り!」
 ウサギは慌てて外へとかけ出していきました。


 カメは季節の変わり目ごとに、全身の皮をつるん、とむいて脱皮します。その皮のうち、こうらの部分だけをカメは取っておきます。カメのねぐらには、こうらの形をしたとうめいな皮がきれいに何枚もならべられていました。皮は日の光を受けて、ダイアモンドのようなあわ白い光沢を放っています。なめらかな曲線を伝って、そのかがやきが今にもどろりと流れ出てきそうです。
「うん、とってもキレイだ。これならみんな喜んでくれるはずだ。それにしても、取っておいてよかった。これくらいしか、飾りつけに使えそうなものが無いからねえ」
 カメはこうらの皮を背負うと、森の広場に向かってだれよりも早く出かけて行きました。


 カラスは町の方へ飛んでいきました。近所に住んでいるハトもいっしょです。
「今日は何をするの? またゴミでもつっつきに行く?」
 ハトはカラスにたずねました。ハトはカラスとよく町へ遊びに行きます。たいていハトは先に帰ってしまいますが、カラスは夜遅くなるまで町にいることがしばしばでした。
「いや、今日はクリスマスツリーを見に行く。人間たちがどんなものを作っているのか、きょうみがわいた」
 それを聞いてハトはびっくりしました。
「ええ! だってぼくらは鳥だぜ。きらきら光るものを見たら、とてもたえられないよ」
 カラスは笑います。そして、とくいげに答えます。
「鳥は光るものがキライさ。けれども、カラスはきらきら光るものが大好きなんだ」
「だったら、どうしてみんなと一緒にツリーを作らないんだい?」
「それはね……」
 カラスは町に向かう途中で、ハトに理由を話しました。二羽の鳥は並んで飛んで、町のさわぎの中に溶け込んで行きました。


 いよいよクリスマスツリーを飾る日がやってきました。森の広場では、リスが一人でみんなが来るのを待っています。
 やがて、最初の動物がやってきました。背中につやつやしたものをのせて、のんびりと歩いてきます。一番乗りはカメでした。
「カメさん、カメさんは何を持ってきたの?」
「ぼくはこうらの皮を飾りつけにしようと思ってね。ぴかぴかしてて、きっと良い飾りになるよ」
 リスはカメから皮を預かると、ツリーの上に登って、せっせと取り付けてみました。ツリーの下からながめていたカメは、ツリーの上にきらきら光るものがあるのが見えました。それこそカメのこうらの皮だったのです。こうらの皮は太陽の光を反射して輝いていたのでした。
 しかし、ツリーの上でこうらの皮を見ていたリスは、こうらの皮がとうめいであることに気がついてしまいました。こうら越しにはツリーの葉っぱが丸見えです。
「これじゃあ飾る意味がないよ!」
 リスはぷんぷんおこりました。リスはこうらの皮をカメに返しました。カメはしぶしぶねぐらに帰っていきました。


 次に来た動物がなんなのか、リスは全くわかりませんでした。「おーい」とリスが声をかけると、その動物も「おーい」と返しました。ふくろをかついで、ピョンピョン跳ねてかけよってきました。そこでリスはようやく動物が誰であるかわかりました。
「ウサギさん? いったいどうしちゃったんだい、そんな寒そうなかっこうをして」
 ウサギは体中の毛を抜いて、ふかふかだった体はすっかりがりがりに細くなってしまっていました。
「私のふわふわの毛を、ツリーに飾ろうと考えたの。それでこんなすがたになったというわけ……はっくしょん!」
 ふだん体を包んでくれていた暖かい毛が無くなってしまったので、ウサギはカゼを引いてしまっていたのです。毛が抜けきった細い体で震えているすがたは、見ているリスのほうが寒くなってしまうほどでした。ウサギがかわいそうなので、リスはウサギの毛の入ったふくろを受け取ると、ウサギを先にねぐらに帰してやりました。ウサギはぴょんぴょん勢いよく走っていきました。
「うーん……ウサギさんの真っ白い毛じゃあ、雪なのか飾りなのか見分けがつかないや。これじゃあだめだな」
 ツリーのいたるところに毛をちりばめても、真っ白な毛ではふりつもる雪と変わりません。リスは毛をふくろにもどすと、根元のそばに置いておきました。


 その後も色々な動物たちがやってきました。クマはとって来た魚をツリーに飾り付けました。たしかに魚たちは銀色に光ってきれいだったのかもしれません。しかし「なまぐさい!」と言われ、リスに回収されてしまいました。キツネは森でとれた木の実をツリーに取り付け、これはクリスマスツリーの飾りにぴったりだと思われましたが、ほかの森からやって来た鳥たちがみんな食べてしまいました。
 それからもたくさんの飾りが広場のリスのもとへ届けられましたが、どれもリスは「ダメだ」と言って受け取りませんでした。自分なりに考えた飾りがだめだと言われ、みんなはだんだんと飾りつけをあきらめるようになりました。
 リスはしばらくの間はみんなの飾りを待っていましたが、みんながあきらめてしまうと、リスもクリスマスツリーを作ることにあきてきました。時がたって年が明けて、広場にはまた森の動物たちが集まるようになりましたが、クリスマスツリーのことを話す動物は誰もいません。
 森の広場の中心には、相変わらず傘みたいに枝を広げた大木がそびえたっています。そのあともその木が飾り付けられることは決してありませんでした。


「なーるほど。これなら最初からカラスがいない理由もわかるなあ」
「だけどカラスくんはひどいなあ。手伝ってあげてもよかっただろうに」
 広場の大木の上で話をしている動物がいます。カラスとハトと、カワセミです。ハトとカワセミは、くちぐちにカラスに向かって話します。カラスはくちばしに星の形をした飾りをくわえていました。カラスはそれを大木のてっぺんにのせました。冬の太陽の光を浴びて、星の飾りはまばゆく輝きました。「まぶしい!」たまらずハトとカワセミは飛び去っていきました。
 カラスはだまって二羽を見送りました。そして、誰に話すというふうでもなく、ぽつりぽつりと言いました。
「きれいで、美しいものがおれは好きだ。だから身近に美しいものがあるならまっ先に見に行くし、いつか美しくなるものがあるならばよろこんでその手伝いをする。それ以外のものには、おれは絶対に近づかない。おれは絶対、かかわらない」
 ひとつ、冬の冷たい空気を打ち消すような暖かい風が吹き抜けました。それに乗って、カラスは二度と飾られることのないツリーの上から飛び立ちました。
 カラスはふたたび、町の方へと飛んでいきました。
スポンサーサイト
第二十九回さらし文学賞 | CM(0) | TB(0) 2014.12.31(Wed) 20:33
copyright © 千葉大文藝部活動情報 all rights reserved.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。