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こつん

 早いもので十九年、わたくしのなかで「生きている」と仮定されたわたくしであるけれど、わたくしはいつかどこかで死んでいるのかもしれなくて、この今日の認識今日のわたくしは昏睡状態にあるわたくしのしあわせな夢であるのかもしれなくて、そんなことをこの前うっかり赤いままの信号を平然と渡り切ったとにふと考えて、ああまたこれこの無限循環、存在証明不可のエラーがそこかしこに点灯しまくってその点灯さえも存在を示せないという絶句、絶句を舌で転がしながらしかしわたくしは手慣れたもので、歩く傍ら過ぎて行く電柱を右肘でこつん、この電柱をこのこつん、でもってひとまず在ると、エラーの表示を×ボタン押してとりあえずこれでいいのだ、放っておけなにがなんでもこの電柱は在るしこのこつんもとにかく何故かは知らんが存在するのですと、全世界の驚嘆極まる痴れ言を悪びれもせず言ってのければ、けたたましい警告音とエラーはしゅるしゅると霧消して、あとには異常な世界の定立とその中でいたく平常に暮らすわたくしが在る。堅牢な信頼世界、その中で闘うものと言えば、レポートとレジュメとテスト、それから英文くらいなもので、頑丈な仮定に守られてのーんと暮らしていれば小説など書ける由無く、二つの〆切を無視してきたけれどさすがに三度目の正直という言葉もある。じりじりと確実に近付いて来る〆切にカレンダーの枡越しに呼びかけて、
――やあ〆切さん、君が来てるのか僕が行ってるのか、正確なところはわからんけれど、わたくしの「生きてる」の仮定が続くならば僕と君とは出会ってしまうわけだね、中学の時には、眠らなければ夜は明けないんじゃないか、ずっと安全な毛布の中に居られるんじゃないかと、半ば縋るように夜を更かしたけれど、次第に東の空が白みはじめてああ夜って寝なくても明けるんだあと信仰の瓦解とともに眠りに落ちたものだよ、僕が一日をじる閉じざるにかかわらず、一日は終わってやがて始まるのだね、そんならせめて〆切さん、来るなだなんて言わないから、もう少しだけ、ほんの一寸でいいから、ぐずぐずしてて、冬の毛布の中みたいなささやかな抵抗をどうにかこうにか、見せてはくれないか、どうにもこうにも、こっちは書けん、のーんとしてしまって、どうもかなわん、たのむわどうにか、もう少しだけ、ほんのちょっぴり、のんびりさせて。そしたら〆切のやつは少し得意げに、
――あんた、あたしにどうこう頼んでも、それは無理なはなし、あんたさっきゆってたじゃない、あんたの「生きてる」は壮大な仮定、揺るぎない異常、そんなら「今日」を永遠にしておしまいよ、あんたの完璧な仮定の体系に、永続する一日を、すこんと差し込めば済むはなし、あたしに来るなと言うよりも、あたしが来ても、あんたがあたしに構わなければ、それで良し、万事ととのって、めでたいじゃないの、なんであんたに、仮定の中に生きるあんたに、そんな簡単な、今日が終わらぬという単純な設定が、どうしてどうして、できないというの。
――ちょいとお待ちよ〆切さん、カレンダーの、枡の中に居る君が、これまたどうしてそんなこと、いやしくも、真新しいカレンダーに、ちょこんと座っている君が、それをいっちゃあ、いけないよ、いいかい暦というのは、例えば暦は、僕と世界の拠ん所、肘と電柱の、こつんに始まる、仮定におけるわたくしと、仮定における世界とが、つながっておるその証、世界があってのわたくしで、わたくしあっての世界であって、ひとたび世界を認めたからには世界を生きずになにをかや、どうして君を知らぬものにてなお生きるべきものにかは。息せき切って巻き上げて、語り尽くせば〆切は、しゅん、となってすごすごと、一月、二週目、月曜に、ちんまり座って、おとなしく。

 本日も、真理が白い目を瞠るその先で、ゆるゆると日向ぼっこ。

テーマ:「今日の○○」

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第三十四回さらし文学賞 | CM(0) | TB(0) 2018.01.09(Tue) 00:38
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