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リリーホワイト

 これは世界中のどこにでもある、もう何度繰り返されたかわからない、ありふれた片思いの物語。どこにでも咲いているユリのように見慣れてしまった、それ故に忘れてしまった、純粋で、だけど少し悲しい恋の物語。もう何度目なんだろうか……この物語は……この物語を語るのは……この物語が語られるのは………………



 この物語を語るには、この世で最も美しかったある王妃の話から始めるのがちょうどいいだろう。むしろ僕にはもうそこからしか語り始められない。
 
 昔々、あるところにとてもとても深い森がありました。当時はGPSもない時代です。近くの村に住む人でさえ入ったら二度と出てこれない、迷いの森。そんな森の奥には人間が立ち入らなかったためか、少し不思議な、太古の時代から森で生きている小人と精霊がいました。精霊は長い間森で暮らしてきたため森のことは何でも知っていますが、人間には見えませんし、会話をすることもできません。小人は少し人間に似いている存在です。とてもとても長い年月を経れば人間と同じくらいの大きさまで成長しますが、多くはそこまで長い年月を生き続けることができません。しかし人と同じように内面は成長していきます。また人とも精霊とも会話することのできる珍しい生物です。小人は精霊の力を借りながら森の奥でひっそりと暮らしていました。
 ある日、小人が森で夕飯の木の実を集めていると、なにやら精霊が慌てています。どうやら人間が森に迷い込んだようです。人間が森を荒らしてしまうと困るので、小人は精霊から人間の場所を聞き、監視しに行きます。人間が森に迷い込むのはそれほど珍しいことではありません。罪人が罰として森に入れられたり、自殺しようと森に入り込んでくる人間もいます。大体は特に何かすることもできず死んでしまいます。だから今回も特に何か起きることもないだろうと小人たちは思いながら、監視にあたりました。迷い込んだ人間は美しい少女でした。小人は普段人間と会うことはありません。そのため人間の美しさはわかりません。しかしどうしてか小人はその少女を美しいと思いました。人間の言葉で言うと一目ぼれというところでしょうか。けれども少女の細い体は森の厳しさに耐えられそうにもありません。小人は気の毒に思いつつも、助けることはせず少し離れてただ見ていました。
 やがて少女は倒れて動かなくなってしまいました。小人はついに息絶えたと思い可哀そうに感じ、墓を作ろうと倒れている少女のもとに近寄りました。近くで見る少女は遠くから見たときよりも一層美しく思えました。しばらく少女に見とれた後、少女の傍に墓を掘り、少女を納めようと少女の体に触れました。そのとき、少女は目を開きました。少女はまだ生きていたのです。小人は少女が生きていたに驚き、また初めて人間と出会ったことで慌ててしまい固まってしまいました。少女は生きてはいたものの元気はなく、たった一言だけ、「お願い、助けて」とだけ言うと気を失ってしまいました。小人はこのまましばらく放っておけば少女は息絶えるだろうと思いながらも「助けて」と言われてしまったので見捨てるわけにもいかないと思いなおし、自らの住む家まで連れて帰りました。
 家で介抱していると少女はだんだんと元気を取り戻してきました。少女がすっかり元気になった頃、小人は少女が森に迷い込んだ事情を聞きました。少女は魔女に追われており、森に逃げ込んだとのことでした。小人は少女を森から元いた場所に帰そうと思っていました。しかしまた魔女に追われることになると、このまま森で小人と共に暮らしたほうが少女のためだと思い少女とともに森で暮らすことにしました。
 このことについて精霊は特に何とも思っていなかったようです。精霊は人間とかかわることはできませんし、森が特に荒らされる訳でもないのなら、人間がいるかどうかは些細な違いだと思っていたようです。
 しばらく小人は少女と一緒に暮らしていました。森での暮らしは大変です。小人は森のことをよく知る精霊と話ができるため食料を集めたりできますが、精霊と話すことのできない人間にはできることがほとんどありません。少女は元気になっても、元気のなかった時と同じように小人の用意した食事を食べることくらいしかすることがありません。少女は助けてもらったのに特に恩返しができていないことを心苦しく感じていました。
 ある日のことです。少女は家の周りを散歩していました。だんだん成長していく少女にずっと家の中にいさせるのもよくない思った小人が、比較的安全な散歩道を教えてくれたのでその道を通っていました。いつもと同じように散歩道を通っていたのですが、その日は偶然通りかかった旅人と出会いました。森に来てから、小人以外の人と会っていなかった少女は嬉しくて、旅人としばらく話したあと家に誘いました。二人で家に帰り、一緒にお茶を飲んで話を続けました。小人は帰ってくると、そこに見知らぬ人がいたため驚き、警戒しましたが、少女の紹介を聞き、話しているうちに安心しました。話しているうちに日も暮れてしまったので小人は旅人を家に泊めました。
 その翌日のことです。旅人が出発の準備をしながら小人と話している間、少女は日課となっていた散歩に出かけました。その時偶然にも、森に逃げ込む前に、家族と一緒によく食べていたリンゴを見つけました。少女はそのリンゴに懐かしさを覚え、取って食べてみました。すると少女は倒れてしまいました。なんとそのリンゴは魔女が用意した呪いのリンゴだったのです。少女は呪いにかかってしまい意識を失ってしまいました。精霊は少女が呪いにかかったことに気づいたので小人に伝えてあげました。小人と旅人が慌てて少女を家に連れ帰り、小人は精霊に呪いを解く方法を聞きました。精霊によるとこの呪いは呪いを受けた者と相思相愛な者のキスによって解かれるとのことです。小人はしばらく悩んだ後、少女にキスをしました。しかし少女は目覚めません。どうやら少女が愛しているのは小人ではないようです。今度は旅人がキスをしました。すると少女は目覚めました。どうやら少女が愛していたのは旅人だったようです。小人と旅人は大いに喜びました。小人は森にいることも少女にとって危険だと思い、旅人に少女を預け一緒に旅に行くことを勧めました。少女もそれを望んだため、旅人は少女を連れていくことにしました。
 それから長い年月が経ちました。あれから小人は何を思ったのか、ある日突然精霊に別れを告げて森から出ていきました。噂によると人間の世界で旅を続けているようです。旅人と少女はしばらくして旅の途中で結婚し、子をもうけたようです。旅人の不思議な縁で彼女らはある国を治めるまでになりました。旅人は王に、少女は王妃になったようです。美しかった少女は成長してからも変わらずに美しく、この世で最も美しい王妃と呼ばれたようです。王となった旅人は、長年の旅のせいか、長く王であることはできなかったようです。
 王がいなくなった国はたいていうまくいかないと聞きます。とくに子供も幼く後継ぎがいない場合、たいてい王妃が代わりに国を治めますが、その心労から病んでしまうことはよくあることです。この国もまた例外ではなかったようです。噂に聞くところでは王妃は病んでしまい自らの娘を国から追い出してしまったとか……



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第三十三回さらし文学賞 | CM(0) | TB(0) 2017.08.08(Tue) 00:00
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